SANKOU

ダークナイトのSANKOUのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.8
ジョーカーの脅威を冒頭からまざまざと見せつけられる。強盗一味全員ピエロのマスクを被っているので、感情が分からずとても不気味な存在感を出しており、用済みになったメンバーから次々と殺されていき、最後に残った男がマスクを外したらジョーカーだったという演出がとても衝撃的だった。ダークヒーローバットマンに正義感の強い新任検事のデント、そして悪の権化であるジョーカー、この三人のバランスがとても良かった。とにかくジョーカーの悪党っぷりが物凄く陰惨なシーンも多く、彼のせいでゴッサムシティーが無秩序な混乱に落とされていく姿はショッキングだ。悪は重力のようなものだ、というジョーカーの言葉があるが、彼は自分で手を下すだけではなく、ゴッサムシティーの市民をも悪の道へと引きずり落としていくような試練を与え続ける。市民の怒りがいつしかヒーローではないが正義のために戦うバットマンに向けられ、正義の塊であったデントが醜い悪の部分をさらけ出していく姿など、ジョーカーの思惑通りに人々が踊らされていく。デントは夜明け前が一番暗く、いつか陽が昇る事を信じているが、しかし光が指すところが見た目通りに明るいとは限らない。不都合な真実より、都合のいい嘘が人々に希望を与えることもある。人の本性は決して悪ばかりではないし、それが終盤に証明されるシーンがあるが、この映画は最後まで暗さを残したまま終わっていく。悪の権化と、悪に落ちた人間と、そして自ら悪の汚名を被る者。ジョーカー役の今は亡きヒース・レジャーの怪演っぷりが目立つが、ここまで徹底的に悪者であるからこそ、バットマンの姿を引き立たせているとも言え、この映画は真のダークナイト誕生の瞬間を完璧に描いた傑作だと思った。
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