五十川周

ダークナイトの五十川周のネタバレレビュー・内容・結末

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

バットマンシリーズはダークナイト以外見ていないです。

【感想】
面白かった。

【良い点】
・Jokerの悪のカリスマとしての魅力
・ハービー・デントのキャラクターチェンジとシンボルの遷移
・有能爺達のジョーク、気遣い
・バットマンの派手なアクション
・テンポの良さ
・バットマンのヒーローとしての歪さ


【考察】
◎物語の構造
 本来、物語を通して、考え方の変化の幅が最も大きいキャラクターが主人公になるのが原則である。それは、最も興味深いキャラクターになる上に、その変化を通して作者の主張を展開できるからだ(以下、この変化をキャラクターチェンジと呼ぶ)。本作品に該当するキャラクターはハービー・デントである。しかし、彼はメインキャラクターではあるが、主人公ではない。

この物語の特出すべき点は、ハービー・デントのキャラクターチェンジを巡って、主人公とライバルが争う構造になっている点だ。

彼がこの町のヒーローから、犯罪者に堕ちることを巡って、バットマンとJokerが争う。
この構造が本作品が単に格闘して勝った負けたではなく、深いところにある思想・信念の戦いであることを際立たせている。
なぜなら、ハービー・デントのキャラクターチェンジが、Jokerの思想の証明になっているからだ。


◎Jokerの思想とは
『善良なのは世の中がまともな時だけ。追い詰められれば誰だって殺し合いを始める』
これがJokerの思想だ。
人には必ず二面性があって、環境が変われば悪人にもなり得る。
正義も悪も表裏一体であるということ。
Jokerだけがモンスターなのではなく、ルールを無くせば、バットマンもJokerも同じ存在であるということ。

※Jokerにとって、対立する相手がいなければこの思想を証明することもできない。バットマンという表の存在が必要不可欠ではある。


◎Jokerから感じるカリスマ性は何に起因しているか
 Jokerのカリスマ性は、何から感じているのだろうか。容赦なく味方を切り捨てる残虐性、敵を出し抜く鮮やかな知略、お金を燃やしてしまうカッコよさだろうか。
 私は、彼の思想の証明を行うことに重きをおいている姿勢が、悪のカリスマと感じる最も大きい要因だと思う。Jokerにとってバットマンとの格闘の勝ち負けは、まるで眼中になく、思想の証明を行う方が大事なのである。これが、作中で言っていたJoker本人が言っていた上等な悪党なのである。
 ヒーロー作品は表面上の戦いで勝ち負けをするものばかりで、その表面下にある信念・思想の対立を描いていないものがほとんどの印象だ(私の浅い視聴履歴の中では)。
 結局、ハービー・デントの闇堕ちによって、Jokerの信念が正しいことが証明された。表面上の戦いでは敗れたが、表面下の思想の戦いでは勝ったのだ。


◎ハービー・デントのキャラクターチェンジに伴うシンボルの遷移について
 恥ずかしながら、シンボルの遷移が単純で明確なものであっても、こんなにも心を打つものだとは知らなかった。分かりやすいシンボルは2つ。コインと火傷の跡だ。

・コイン
両方とも表:自分の運命は自分で決める性格。正義だけが正しいとしていた。

表面が焦げて(ちゃんと顔が焦げている)裏表が出来る:人間には二面性があること。混乱の本質である公平性を求めて、運命を運否天賦に任せるようになった。

・火傷の跡:人間には二面性があること。


【総評】
 ほかにも魅力があるがキリがないので、時間が出来たらゆっくり考えてみたい。特に映像的に良かった部分も考えてみたい。
五十川周

五十川周