動けるデブ

ダークナイトの動けるデブのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.0
世の中にいくつか存在する一作目より良い二作目らしい。らしい、というのは自分が未だに「バットマン・ビギンズ」を見ていないからです。それほどバットマンには思い入れがありません。

公開当時、アメリカで興行収入が凄いと噂で聞いて見に行ってみたのですが、行ってよかった。今でも自分の中で大切な作品となっております。

今の若い方は理解できないかもしれませんが、自分は子供の頃からアニメやら映画やらでさまざまなバットマン作品がしょっちゅうTVで放送されていた世代で、バットマンがどういう存在なのかというくらいの知識は持っていたので作品にはサクッと入れました。

この作品の中でバットマンは本当にヒーローなのか?正義とは何か?ということが描かれています。これは現在のアメリカという国そのもののアンチテーゼのように見えます。

バットマンは厳密には警察でも軍隊でもない所謂「自警団」のような存在。
自分が悪と判断したものを断罪することで、同調する人もいれば批判する人もいる。まさにアメリカではないでしょうか。
どう見てもバットマンの正義は身勝手ですしね。

そして、この作品で欠かすことのできない映画史に残る悪役「ジョーカー」は不安定な正義のバットマンと対照的に真っ黒な悪です。
ジョーカーはあらゆる矛盾につけ込み、人々が当たり前に考える正義を揺さぶってきます。

ジョーカーは人々が考える常識や正義の概念を破壊することや、バットマンの存在にこそ自分の存在価値を見出しているのです。

「俺は(バットマンを)殺さないさ。
お前がいなきゃケチな泥棒に逆戻り。」

という台詞からもそれがわかります。

また、ただヒーローに焦点を当てるばかりでなく、船に爆弾が積まれたと知らされた乗客の姿を描く事で、テロと向かいあう市民の勇敢な姿までもを描いて見せた点にも称賛をおくりたいです。

バットマンだけではなく、一般市民、マフィアなどさまざまな人物とジョーカーという狂人の闘いを通してテロリズムに対処するのがいかに困難であるかが描かれています。

突発的に襲いかかるテロに対してはヒーローですら対処は難しい。一般人など無力でしかないのか?けっしてそうではありません。それはバービー・デントやゴードン刑事、船内の人々を通してしっかり主張されていると思います。

そしてなんといってもこの作品を傑作たらしめるのは、ヒース・レジャーの天才的な演技が大きいと思います。
役作りにとてつもない努力をしたことも広く知られていますが、あの笑い声やしぐさの一つ一つが本当に素晴らしかったです。

本当ならば5点満点あげたい映画なのですがジョーカーの最後のシーンや、ジョーカーが負けたことが悔しいのでこの点数にしておきます。
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