ジャイロ

黄金の腕のジャイロのレビュー・感想・評価

黄金の腕(1955年製作の映画)
3.6
これ、ソウル・バス案件です。タイトルクレジットがやたらかっこいいと思っていたらソウル・バスでした。

『北北西に進路を取れ』『めまい』『サイコ』とヒッチコック大先生との仕事は3本だけど、プレミンジャーさんとはなんと11本も仕事をしているソウル・バス。やっぱかっこいいね。

『黄金の腕』

どうやらこれ、カードの腕みたいね。

腕が鳴るぜ

そう、この黄金の腕がな

勝手にそう思って観てたけど、言うほど鳴らなかった。もっと腕が鳴る映画を観てるからね。たぶんヘンリー・フォンダの方が腕が鳴るぜ。

一度手を染めてしまうと簡単には抜け出せないのが悪の道。たとえ改心したとしても、日陰に生きる者たちが、まるで腐肉に群がるハエのようにどこからともなく寄ってくる。ましてやクスリなんかに手を出したら尚更で、ウジ虫まで涌いてくるようになります。おぞましい。

フランク・シナトラの存在感、スター性がすごい。演じるフランキーのキャラクターはイマイチだけど、フランク・シナトラは絵になるなぁ。

エリノア・パーカーのファムファタールは、怖いというよりもツライ。こんな夫婦生活はどこか間違ってるし、ただひたすらにツライ。愛を履き違えてるのがまたやるせない。

対するは、優し過ぎてファムファタールになり損ねたというキム・ノヴァク。『痴人の愛』でも思いましたが、煌めくほどの悪女の存在が、こういう優しい女性をより輝かせるんですね。淀川さん曰く「花が咲いてる」とのこと。まさにその通りだ思いました。貧困に喘ぐダウンタウンの街の中に咲いた一輪のキム・ノヴァク。これがまたなんとも綺麗なんですね。

時折ドラムによる演出にハッとされられます。上手いなあ。

きっと明日はうまくいく。そんな願いだけを胸に抱いて眠りにつく、そんな毎日。目覚めると、鏡の前に弱い自分が映りこんでいることに気付く。ああ、なんだろう。人生ってやりきれないな。

この映画は、クスリの恐ろしさを真正面から突き付けてきます。フランク・シナトラ演じるフランキーが、もう奈落の底まで堕ちていく。

誰もが一人ぼっちで寂しくて、人の心の弱さがホント悲しくなる。そんな中でも生きていかなくちゃならないのが人間で、そこには救いもあるし、救われぬ魂もある。

う~んやっぱりなんだか哀しいなこれ。