バテラ

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのバテラのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

妻を亡くした主人公プレインビューが幼い息子とともに、石油を掘り当て、成り上がっていく…。簡単に説明すると実にアメリカンドリームな話だが、この作品は痛烈に近代のアメリカを皮肉った作品だ。

序盤のプレインビューは息子の為に働いてる様にも見える。しかし息子が中盤に事故で聴覚障害者になると、段々と邪険にし始め、最後は自立しようとする息子と縁を切ってしまう。

息子の為でもなく、無神論者のプレインビューはひたすらに、金と権力を欲望のままに求める。他の理由や動機は描かれない。恐らくそんなものはないのだ。空虚な欲望がひたすら突っ走って成り上がっていくことの恐ろしさ。そして対をなす筈の宗教家すらもまた、宗教を利用し金と権力を求めている節があり、ラストでプレインビューに信仰を試されるが、あっさりと寄付金の為に転び、そして撲殺される。プレインビューの人生に投影されているのは、アメリカの膨れ上がった資本主義が、古くからの良識を薙ぎ払い、自壊していく様なのだろう。
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