青二歳

日本沈没の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

日本沈没(1973年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

なんとも性善説に満ちた映画だった。今見るとこれは難民問題を真正面から扱った映画ですね。1億人の難民が発生したらどうするのか?という。ストーリーの山場としては、日本沈没という仮説の段階で日本人を一人でも多く救おうと動く、即ち国土を捨てるという判断を下す総理大臣ら為政者の苦心ですから、その後の難民がどうなるかは描かれませんけども。
ここで描かれる国際社会の反応は端的だけど興味深い。極めて性善説(日本の国連信仰も人類は善良なる選択ができるという性善説に基づくものなんでしょうか。結局コンサートオブヨーロッパの延長にしか見えませんし、個人的にはそんな信頼できないのですけれど)。国籍問わず出てくる人間全員と言っていいくらい善良だった。

世代的に馴染みが薄めだからか、70-80年代の映画はつい避けがち。決め付けている訳ではありませんが古臭さが目立つというか…内容はともかく洋の東西を問わず洋服や髪型がモサかったりなんだかなぁと思うことが多く…TVで馴染んでいた映画以外をわざわざ見る気が起きず。しかしやはり食わず嫌いはアカンですね。森谷司郎も好きで無いから敬遠していたたけど、かなり骨太のSFパニックムービーで、重厚な政治家ドラマも見応えあり、何より特撮が素晴らしい!いやはや見事でした。CGの特殊撮影は技術革新がすごくてすぐ古びてしまう(90年代後半のCGとかすごくちゃちいものに見えてしまう…)けど、アナログの特撮というのは、一定の水準を超えたものは今みても見応えがあります。アナログの特撮とCGの特撮では、期待される視覚作用が違うというのもあるでしょうが。

またこの映画で描かれる難民問題がとにかく示唆的で面白い。その後の日本人がどうなるかは描かれず、1億の人口を世界中に移動させるところでお話が終わりますが、十分考えさせられる事が多かったです。思考実験としては今読んだ方がリアリティがあるかもしれません。これは原作読んでみようと思いました。ディアスポラになるのか…各地の日系移民(難民でない)をみると郷に入れば郷に従えの実践が目立つので…日本文化はルーツ程度にしか残らず消えてしまうだろうと思います。でもここまで強烈な喪失を経験すると文化を守ろうという動きが出たりもするのかなぁと思ったり。鎌倉の大御所が立案させた三つのプランに続き、日本にとどまって共に滅びるべしというプランがあった事はフィクションとはいえ日本ならではの感性だなと感じます。

ただ長い。画面には緊張感があるので飽きませんが、藤岡弘、(一発変換で読点がつくのか笑)といしだあゆみのロマンスはバッサリ切って欲しい。ハリウッド映画でもなんでも、ロマンスやセクシーショットを入れなくてはならないルールがあるんでしょうか。いしだあゆみ可愛いけどさ。
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