イチロヲ

恐怖のイチロヲのレビュー・感想・評価

恐怖(1961年製作の映画)
4.0
別居中の父親の屋敷に招待された車椅子の令嬢が、姿を現さない父親と屋敷内に漂う禍々しい空気に触れていく。負の幻影に縛られた令嬢の推理劇を描いている、サスペンス・ミステリー。英国ハマー・フィルム製作。

筆者は60年代末期のヒッピー映画でスーザン・ストラスバーグを知ったので、それ以前の彼女を観るのは、本作が初となる。少女と大人の中間のような、麗しき美貌は言わずもがな。琥珀のような眼(本作はモノクロだが)をクルクル動かす演技に惹きつけられる。

大富豪、行方不明の父、脆弱な令嬢、義理の母というワードが並んだ時点で、おおよその裏事情を予測することができる。主人公側が常に的確な推理を見せるし、お抱え運転手の青年がずっと護衛してくれるし、行動を妨げる障害も出てこない。

・・・と思いきや、終局にてミスリード劇の全貌が開示されていく。「そこまでする必要あるのか?」という疑問が湧くけれども、攻守逆転のカタルシスが強大であり、スーザンの下卑た人間を蔑む視線にゾクゾクさせられる。要するに、やった者勝ちな作品。
イチロヲ

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