カタパルトスープレックス

スプリット・セカンドのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

スプリット・セカンド(1992年製作の映画)
3.6
掘り出し物のルトガー・ハウアー主演のバディー警察モノのSF作品です。1992年のロサンゼルス暴動と公開時期が重なってしまい、あまりヒットしなかった不幸な作品。

舞台は地球温暖化の影響で水位が上がり水浸しになった2008年のロンドン(1992年作品なので近未来設定😅)。相棒が連続殺人犯の犠牲になった刑事のハーレー・ストーン(ルトガー・ハウアー)が主人公。その事件は犯人も捕まらず、未解決事件になります。その犯人がまた活動を開始しはじめた。被害者の体を引き裂き、心臓をえぐり取る残忍な犯人。果たしてハーレーは相棒の仇を取って犯人を捕まえることができるのか?という話です。

👍この作品の良い点。ずばり、『ブレードランナー』っぽい部分です。

おそらくなのですが、監督はかなり『ブレードランナー』(1982年)を意識したと思います。

(類似点1)『ブレードランナー』では追われる立場だったルトガー・ハウアーが、本作では追う立場に。ハリソン・フォードもコートを着ていましたが、本作でルトガー・ハウアーが着るのは黒いレザーコート(だと思う)なんです。どことなくロイ・バティーっぽい!

(類似点2)暗い未来を描いている点も似ています。水に沈みつつあるロンドン。『ブレードランナー』とはまた違うデストピア。サイバーパンクっぽさはないのですが、水没しつつある大都市も悪くない。

(類似点3)そして、ウェポンですよ。『ブレードランナー』では「デッカードブラスター」が登場しますが、今回ルトガー・ハウアーが使うのは「クソバカでかい銃(Big Fucking Gun😂)」です。名前がないのが惜しい!ボクは今回の「クソバカでかい銃」の方がデッカードブラスターよりカッコいいと思う!

👎一方で、ダメな部分もあります。このダメな部分は設定が良いだけにもったいない!本当にもったいない!

まず、キャラが立っていない。ルトガー・ハウアーが演じるハーレー・ストーンが単なる頑固な刑事なんですよ。そして、バディーのディック・ダーキンもオックスフォード大学でのエリートなのは良いのですが、その頭の良さが活かせていない。ハーレーが野生の感、ディックが頭脳というコンビなんだと思うんですよね。そのキャラがきっちり立つ前に話が進んでいってしまう。ヒロイン役のキム・キャトラルも可愛いのですが、可愛いだけ。『マネキン』(1987年)はよかったのになあ。

あと、犯人もいまいちなんですよね。そもそもなんでそんなになったのか、よくわからない。強いんだけど、その強さの原因もよくわからないし、目的もよくわからない。悪役ってすっごく大事なんですよ。『バットマン』のジョーカーとか、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターとか、『スターウォーズ』のダースベーダーとか、それこそ『ブレードランナー』のロイ・バティーとか。良い映画には魅力的な悪役がいる。

すっごく魅力的な舞台設定で、良い役者が出ている。それをうまくまとめられなかった監督の手腕。タイミングも悪かったけど、ヒットしなかったのも仕方ない部分もあるとは思います。

ちなみに、 デヴィッド・フィンチャーはこの作品から『セブン』のインスピレーションの一部を得たらしいです。なるほどと思う部分もあれば、なぜ?🤔と思う部分もあり。