くりふ

エイリアンのくりふのレビュー・感想・評価

エイリアン(1979年製作の映画)
4.0
【究極の畜生】

アマプラ見放題にて。久々の再見だが…おー、褪せず、揺るがぬ異形美に包まれた、作り手の思惑も超えたらしき暗喩の宝庫。これは、いつまでも残る映画でしょう。…卵に潜んで。

ルーカスとスピルバーグが、A級品質のゲテモノ映画で当てちゃったお陰で、その流れにある本作も、濃ゆいメンバーが寄ってたかって、スゴイのに仕立てちゃったワケですね。

リドリー・スコットの功績はもちろん素晴らしいが、そもそもの元ネタ提供も、ギーガー参加を推したのも彼ではなくダン・オバノン。リプリーの役を女性に変えたのはアラン・ラッドJr.らしいし、様々な“機”が重なりあって、奇怪な奇跡が起きたものでしょう。

元々はB級ネタで、ロジャー・コーマンに売り込んでいたもの。いま見ればトホホな箇所も多く、結局はお化け屋敷枠から抜けられない。…物語の表層だけ眺めると安いもの。

要はやはりギーガーのデザインパワーで、その、性徴と機械入り乱れるカオスが、いつしか作品の隅々まで染みてしまったのではと。初めは抱かれるつもり、なかったのに…。www

エイリアンはただ他の種を搾取し潰し、自分の種だけを残したい。いわば性欲のない強姦者だが、ヒューマノイドから進化したのなら、これは進化なのか退化なのか。

畜生界の生物であるなら、それが究極に進化した形態、と言えなくもないかと。

性欲がないから、第1犠牲者を見ればわかる通り、レイプの標的は男女平等。でも、絵としてはやっぱり、強姦者はちんこに見えた方が、わかり易いんだね。

主人公リプリーの変遷でみると、始めは機械の母に抱かれ、規則に縛られる歯車だったものが、レイプの脅威に晒されることで逆に、女を思い出す流れになっている。最後の下着サービスは、女子危機の証し。…が、男要らずの単身で、ちんこに挑むヒロインが爆誕する!

宇宙を舞台に、レイプリベンジムービーとして着地させたのね。白い下着に白い宇宙服。

“性と機械”を補強する、ある人物の存在がまた、効いていますね…。リプリーは疑似レイプされそうになるが、コレ、エイリアンの行為を真似た犯行なんですね。姿は男なのに、疑似でしか挿入できない苛立ちらしきものさえ醸し、改めて、悍ましき名シーンだと思う。

エイリアンの最終形態は、結局は襲い来る大男の姿で、スラッシャームービーと変わらぬ見栄えになっちゃった。男の影に覆われて振り返る女、なんて、いかにもな古典演出。

ギーガーのデザインは図と地が一体となって醸される世界観だから、図だけ切り出すとどうにも限界があるよね。だからレイプリベンジムービーとは、巧い逃げ方でもあると思う。

…等々、振り返れば堪能ポイント、たくさん詰まっているけれど、キリがないから愚考はいったん、この辺でやめておきます。

まぁ、なんのかんの言っても…リプリーの“スキャンティー”が、イチバンの破壊力かも!?

<2024.1.8記>
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