いの

都市とモードのビデオノートのいののレビュー・感想・評価

4.5
1989年制作のドキュメンタリー。デジタルの時代に入ってきて、オリジナルと模倣との境目がなくなっていく。オリジナルとはなんぞやというヴェンダースの問いかけが深まっていく。そんななかで、まだファッションにはオリジナルが存在するのではなかろうか?という仮説を立て、ヴェンダースは山本耀司に会いに行く。わたしは山本耀司という方をよく知らないけど、多分他者にはそうそう簡単には語らないであろうことを、ヴェンダースには語っているのではないかと推察した。ヴェンダースの問いかけは深く、そして合いの手がとてもうまいと思う。深淵までいこうと思っている者同士が共鳴しあってる感じ。迷えるヴェンダースは、対話を通し、どこかしら希望を見出したのだと思うし(フィルムにこだわるのではなく、途中からビデオ撮影も楽しくなってきたみたいだ)、山本耀司もヴェンダースという素晴らしい聴き手を通し、語ることでどこかしら開放されていったのだとわたしは思う。山本耀司の心の根には母に対する思いがあり、そこから全ての女性への敬愛の念へと広がっていったのだと思うと、女性男性の枠を越えて全ての方にこの映画を観て欲しくなる。そして、女性への敬愛の念の広がり方が、ランウェイでのスカートの裾のふわっとした広がり方と重なって(ふわっとした広がり方という言い方はホントはちょっと違う。適切な言葉を見出せなくてもどかしい)、心のなかが熱くなった。フォルムの美しさ。服に対する考え方、「黒」へのおもい、古き写真集から得るもの。
いつか見直したいドキュメンタリー




〈追記〉2023年6月
鑑賞後、時間が経ってから思うのだけれど、わたしはこのドキュメンタリーがすごく好きかも。時間が経ったあとにも、心の中にちゃんとある。
ヴェンダース監督作品のなかでも上位にくる作品です。

4.1→4.5に変更します


いつかまた観る
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