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都市とモードのビデオノートのmanamiのレビュー・感想・評価

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山本耀司。今の若者はどのくらい彼のことを知っているのだろう。慶應義塾大学から文化服装学院という一風変わった経歴の持ち主で、タブーとされていた「黒」をファッション業界に持ち込んだ人物。映画好きには、北野武映画でお馴染みかもしれない。
そんな彼のドキュメンタリーを、フランスの国立芸術文化センターからのオファーによって、ヴィムヴェンダースが撮る。監督は最初、乗り気ではなかったそうだが、ビリヤードをしながら、あるいは向かい合って、またはビルの屋上でと対話を重ねるうちに、共感を覚えていく。ファッション、特にショーと映画とに共通点を見出す過程のドキュメンタリーと言えるかもしれない。
山本耀司は、人への興味が服づくりの最初の段階だと語る。最初はヨーロッパ人の体型でデザインし、コレクション後に日本人体型の型紙を作り直すという話も面白い。
アーティストやデザイナーという職種から少なからずイメージするような気難しくエキセントリックな印象は皆無で、とても穏やかで理性的に見える。ショーの直前でスタッフ達が忙しく動き回っている時でさえ、まるで他人事のように悠然と構えている。さらにはデザイナー以外の仕事をするならと聞かれて、ヒモになりたいと答える。なんと言うか、まあ、ざっくり言うと、「この人モテるだろうな〜」という感想に尽きるわ。
商業的成功と尊敬されることとを両立させなければならないと話す彼が、ファストファッション全盛の今ならどんなことを伝えてくれるのかなという興味も湧く。
そんな彼を、監督はたびたび、カメラ画面の中で見せる。その背景は別のシーンの山本だったり、砂嵐や街並みや、回るフィルムだったりする。画面が二つ並び、さらにその背景がまた別のシーンということもある。
それは監督が被写体に感じたパラドックスでもあり、冒頭で語られる「像(イメージ)の原画と複製」の表現でもあるのだろう。映画を「19世紀に発明された機械文明の芸術 光と動き 神話と冒険の美しい映画言語 愛と憎しみを語り 戦争と平和 生と死を語る言語」と定義づけたり、ドキュメンタリーにしてはヴィムヴェンダース自身の言葉も多い。

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