しの田

サラの鍵のしの田のレビュー・感想・評価

サラの鍵(2010年製作の映画)
4.0
 ホロコーストは何度観てもショッキングで、それが子供に関するものならば特に目を背けたくなる。冷静でシステマチックな虐殺は底知れぬ恐ろしさを感じる。
 ユダヤ系フランス人の少女と、彼女の足跡を追う現代のジャーナリスト。アパートの納戸によって結びついた2人によって、辛い真実が明らかになる。
 反ユダヤ的なフランスは描かれるものの、サラを助けるフランス人たちが多く描写されて、悲惨な状況の中でも人間の強さを信じることができる。また、屋内競輪場の惨劇や引き裂かれる母娘の様子など、ショッキングな描写がかなり直接的に描かれる。2人が収容所から逃げ出す描写に見える、名前や顔を認識することの重要性。人間性を取り戻す動き。
 戦後フランスでコラボの経験やユダヤ人迫害の記憶は積極的に忘却されようとした動きもあり、過去を掘り起こされることへの嫌悪は容易に想像できる。しかしラストが示すように、過去と向き合い語り継いでいく姿勢が示される。
 悪い想像が頭を駆け巡り、ハラハラし通しだった。現代パートは箸休めになったけど、こっちはこっちで息が詰まるよう。ホロコーストの悲惨さ、過去との向き合い方、未来への希望、歴史映画としてかなり良かったと思った。
しの田

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