ヒロオさん

サラの鍵のヒロオさんのレビュー・感想・評価

サラの鍵(2010年製作の映画)
4.2
1942年、ナチス占領下にあったフランスの政府が、ユダヤ人を一斉に強制収容所へ送った「ヴェルディヴ事件」。
その悲劇の渦に巻き込まれた少女、サラの人生を女性ジャーナリストが追う話。

ジャケットが微妙すぎて期待していなかったが、胸に迫る、隠れた名作だった。

悲しいシーンは多々あったが、悲劇を強調するような押し付けがましさがない。
キャラクターの心情描写が丁寧だったからだと思う。
作り手の感覚の大人っぽさを感じる。

ストーリーとしても上質だった。
話が進むにつれて女性ジャーナリストの人生と、サラの人生が繋がっていき、過去と今が交差するという筋立ては惹きつけられた。

「ヴェルディヴ事件」とは、1942年の夏の2日間で、フランスにいたユダヤ人1万3千人が検挙された大規模なホロコースト事件である。

ユダヤ人は、炎天下のなかパリの屋外競技場に一時的に収容された後、東欧各地の強制収容所へ送られた。
屋外競技場では、トイレや水さえ与えられず、人々は飢えと渇きと臭気に襲われながら、5日間過ごした。

意外かもしれないが、この事件を実行したのはフランス政府である。
ナチスは占領下にあったヨーロッパ各国にホロコーストへの協力を要請しており、それに対する対応は国ごとに異なるが、フランス政府はユダヤ人狩りに加担していた。

フランス政府はヴェルディヴ事件への関与を長く否定していたが、1995年にシラク大統領が責任を認めた。
競技場は取り壊されたが、跡地には慰霊碑や展示がある。
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