さわら

キング・コングのさわらのレビュー・感想・評価

キング・コング(1933年製作の映画)
4.0
怪獣(怪物)を二分するならば、「圧倒的恐怖を孕んでいるもの」、あとは「愛嬌あって愛くるしいもの」に分かれると思う。ジョーズは前者、歯ぐきこわすぎ。ギャレス版ゴジラは後者、咆哮までのタメとそこからの可愛らしいフォルムに萌える。
そんで本作キングコングはどちらかというと、圧倒的後者に属している。特にティラノサウルスとの戦いは萌えポイント多めだ。吉田沙保里ばりに足を取ろうと執拗すぎるタックル、レスリング創世記の原型をみた。またこの戦いは口に手を突っ込み顎を破壊するというおぞましい結果で終わるのだけど、本能からの攻撃で、ティラノサウルスを殺したことを意識してないキングコングはそのあと死体を弄ぶ。文字にすると字面は怖いがその遊び方が幼児に初めて玩具が与えられたようで、なんともほっこりしてしまう、萌え。食人シーンすら愛しい、萌え萌え。

圧倒的自然の前に畏怖すべき人間たちの、一種の神殺しを描いた傑作だった。キングコングは決して悪くなく、悪いのは常に人間たち。そのため否応なくキングコングたちに感情移入してしまうように仕上げられている。ラストの有名すぎるエンパイアー・ステート・ビルの戦いには、当時としては珍しかったであろう、飛行機なんかも飛び出すし見所も多め。
それにしても現代的なぬるぬる動く怪獣映画もいいけど、ざらざらがくがくな怪獣映画はもっといい。なんとなく神話の紙芝居のようだった。当時の映画技術の限界が、実は今みると演出的に素晴らしいことはままある。豊かさばかり求めちゃいかんね。本作のテーマにちょっと繋がるけれども。

@横安江町商店街(カナザワ映画祭)
初めての野外上映、ブラボー!地元のガキどもと一緒に観た。前にいたガキが食人シーンで「うおぉ…」と言葉を失っていたのが印象的。君の未来に幸あれ!