半兵衛

博奕打ち 総長賭博の半兵衛のレビュー・感想・評価

博奕打ち 総長賭博(1968年製作の映画)
4.0
跡目相続のトラブルを解決しようと奔走しているなずなのに、仲間からは理解を得られず敵の奸計に一方的に翻弄され挙げ句の果てに最悪の結末を迎えて自らも立場を失ってしまう鶴田浩二の不憫さよ。でも自分の考えがトラブルに一番有効だと思っても実際には事態を悪化させることはどの社会にもよくある話で、そういった意味では一番任侠映画のなかでも普遍的な内容ではと思ったりもする。

そして改めて見直すと、冒頭での曽我廼家明蝶がこの映画の本質である「トラブルを解決するためには自分の考えを犠牲にして周囲と妥協しなければならないこともある」ことへの発言をしていることに気づかされる。そのことを聞いていたはずの聡明な鶴田が、任侠の精神にこだわるあまり己の正義や主張を優先してギリシャ悲劇ばりの転落へ向かっていくのが皮肉。

一分の隙もない笠原和夫の脚本を荘厳な演出でまとめあげて一流のドラマに仕立て上げる山下耕作監督の演出は凄いと言わざるを得ない(ただ当の笠原はテレビドラマ『アンタッチャブル』を元にこの作品を執筆しており、ハイテンポでの語り口を想定していたのに試写で鑑賞したときあまりにもスローな語り口だったので怒ってしまったというのも面白い)。

でも一番泣かせるのがボンクラだと思われていた名和宏の最後の奮闘ぶり。
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