ひょんなことから透明人間に
なってしまった男の、
哀愁漂う人情と愛の物語。
このひょんなことから、っていうのが
マジでひょんなことからなのが、
おもしろいけど本人にとってはまぁ、
かわいそうというかなんというか──
だって、コーヒーをこぼしただけなんやから。
しかも、本人じゃなくて、トイレの場所を
聞いただけの施設の研究員が。
どんくさい研究員、コーヒーこぼしただけで
ぶっ壊れるしょぼい機械、そして
そんな大事な研究を一般人が気軽に入れる場所で
行うガバガバのセキュリティ。
この全てが噛み合い、しがないサラリーマンの
ニックは晴れて透明人間になったのである。
そして、哀しいかな、透明人間になる前から
透明人間みたいだったニックの、
いなくなっても誰も困らない感。
可もなく不可もなく、当たり障りのない生き方。
親友と呼べる者もいない、
向上心みたいなものもない。
現状維持こそが信条のニックが、
透明人間になることによって人との
繋がりの大切を思い知らされるという──
透明人間=自由の象徴みたいに思われてるけど、
実際なってみたらたまったもんじゃない。
買い物もできず、食事もろくにできず、
瞼が透けるから落ち着いて
眠ることすらできない。
男はすぐ透明人間になって女の裸を
覗き見ようとするけど、その裏にはこんなにも
きつくてつらい副作用があることを
理解しておかなくてはならない。
俺が透明人間になったらどうするかって?
女の裸を覗きます。