冒頭からラストに至るまで電車が出てくる。姉と弟が乗ろうとすると、発車して、あと僅かで乗れずに行き場を失う。辛うじて次の電車にのれた姉と弟は、固定ショットの長回しで駅を後にする。これ程までに映画的だと言えるショットは他にないんじゃないかと言う程に美しい。カメラは姉と弟の道中を、遠目のロングテイクで据えており、ギリシャに雪が降るなか、2人だけが遠くから走り抜ける姿は、トタントタンと「規則的」に音を立てつつも国境を越える事ができない電車を思わせ、その他のシーンに於いても長回しによる動く絵画は、無情に彼女たちに待ち受ける不幸を知らぬふりをして積み重ねてゆく。電車の叙情詩と言うにふさわしい傑作。