slow

霧の中の風景のslowのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.9
古いフィルムのザラついた質感と短調の調べ。あのホーム手前から汽車を覗くカットに、潜在的なノスタルジーを刺激されたのだろうか。まだ映画に興味もなかった幼い頃、偶然目に止まった映画のTVCM。それを不意に思い出していた。それはきっと記憶違いで、実際に本作の思い出に耽っているわけではない。自分の中にある風景。自分の中だけにかかる、霧の中の風景だった。

『美しき冒険旅行』とは真逆を行く、終始寒々しい空と空気。夢と現実、もしくはその間の混沌とした世界で、子供達は何を得て何を失うのか。元詩人である監督が、これは子供に聞かせていた創作のお伽話を元にした映画だと言っていた。作った背景にある様々な要素が、魅力として結実した名作だと思う。
slow

slow