しのごの

アメリのしのごののレビュー・感想・評価

アメリ(2001年製作の映画)
5.0
『アメリ』というタイトルを耳にするだけで心躍るのは何故だろう。
気分を上げたいときに真っ先に聴きたくなるのはアメリのサントラ。
まるで自分がパリにいてアメリになったかのような気分に浸ることができるから… という、なかなか痛々しくて小っ恥ずかしい理由。

この映画との出会いは私が17歳、大学受験を控えた高校3年生の頃だったと思う。
今では減少しつつあるレンタルビデオショップにてDVDを借りてきて、実家の居間で独りで鑑賞した。

当時は、独特すぎるアメリの世界観に圧倒されて惹かれるどころか不気味な印象さえ持ったような。
アメリの奇抜な髪型やクラシカルな服装、社会に うまく馴染めていなさそうな個性溢れる登場人物たち、赤や緑など原色を使った重厚なインテリア、セックスやアダルトショップなど性に関するストレートな描写、全体的に緑がかったような画面の色合いなど、あらゆるものに ”センス” と言われるであろう独特な匂いを感じて「やっぱフランスは一味違うな🇫🇷」と圧倒された。

恋愛映画のジャンルで推されていた話題作だったから てっきり のほほんとした癒し系ムービーかと思いきや、冒頭のアメリの生い立ちからブラックユーモア満載で出鼻を挫かれた。

公開当時、日本の女性たちが こぞってアメリの髪型に似せたと聞いて驚いたけれども、皆が本当に真似したかったのは髪型じゃなくて、不器用ながらも我が道を行くアメリの生き方や哲学だったのかも。


この映画を観るたびに、行動しなければ何も変わらないということについて考えさせられる。
シンプルなことだけど、とてつもなく難しいこと。
歳を重ねれば重ねるほど頭でっかちになって、その難しさが増してゆくような気がする。
行動しなければ成功は もちろん、失敗して経験を積むことすらできないから、やっぱり幾つになっても周りから冷ややかな目で見られたり鼻で笑われても行動し続けるしかない。
行動の先には きっと幸せが待っているはずだから。
その幸せは、もしかしたら かつての自分が
期待していた形とは全く異なるものかもしれないけれども、「これで良いのだ」と自分を認めて納得できる心の平穏が それまでの経験から得られたことこそが本当の幸せなのかも。


内気で消極的で人付き合いの苦手なアメリが失敗しながらも試行錯誤して前に進んでゆく姿に いつも勇気を貰う。

密かに想いを寄せる人の些細な言動に一喜一憂するアメリが愛おしい。
分かる、すごく分かるよ、その気持ち。
あーでもないこーでもない独りで考え込むほど頭が ぐちゃぐちゃになって辛くて しんどいから どうにかしたいのだけれども、相手に本当の気持ちを確認する勇気なんて更々無くて、独りで神様に祈ったり神様を恨んだりしてばかり。
やっぱり行動を起こさないと何も変われないんだね。


オープニングとエンディングの、日常の他愛も無い出来事を淡々と語るナレーションが好き。
ストーリー自体は ”造られたもの” 感が否めない ご都合主義で おとぎ話かのような展開ばかりなのだけれども、それでも ふと日常を感じられて親近感が沸くのは あの独特なナレーションの おかげだと思う。

エンディングのアメリの笑顔が忘れられない。
人は安心すると あんなにも柔らかに朗らかに笑えるのね。
今頃、アメリは どこで何をして過ごしているのだろう。
相変わらず あの奇抜な重ためブツ切り おかっぱで、ドゥ・ムーランで働いているのかしら。
アメリの幸せを祈っています。
しのごの

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