しのごの

べイビーわるきゅーれのしのごののレビュー・感想・評価

べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)
3.0
最初は設定や登場人物に嫌悪感しか抱けずキツいなあ〜〜〜というのが正直なところだったのだけれども、最終的には親近感すら沸いたから不思議。

生活(日常)と殺人(非日常)が あまりにも近すぎて困惑し、序盤は なかなか入り込めなかった。
鶯谷や秋葉原など身近な地名にも過剰に反応しすぎてしまったかも。
だりぃ〜と文句を垂れながら殺し屋の仕事を片付けるところとか、家を出る間際に「チャリの鍵 忘れた!」と同じ感覚で「銃 忘れた!」と慌てて家中を探し回るところとか、演出が あまりにも わざとらしくて鼻につく。
実は強いとか、社会に馴染めないとか、あるあるの設定すぎるよ。

…とブツブツ言いつつも、普通の女の子とは全く異なる主人公たちのバックグラウンド(恐らく かなり複雑)が すごく気になったし、本当は どんなことを感じて考えて どんなことに笑ったり泣いたり怒ったりする女の子なんだろうと、興味が どんどん沸いてきた。
作中では物騒で非日常的なワードが たくさん飛び交っているけれども、そういったものを削ぎ落として見えてくるものは ”女の子の成長日記”。
コミュ障すぎてバイト受からんとか、自炊ダルすぎて鍋やカップ麺ばっかり食っとるとか、まるで妹や後輩を見ているようで愛おしくなっちゃう。

社会に出て自分という人間を知っていくことは痛くて辛くて苦しいこと。
自分を受け入れられずに現実逃避し続けることって、その一瞬は楽になれるんだけど結局 自分から目を逸らしているだけだから いつまで経っても苦しいんだよね。
自分からは一生 離れられないし、逃れられないから。
例え しんどくても、心に平穏を もたらすためには自分を受け入れることが一番の近道なのかもしれない。
その しんどさを分かち合える人が自分の側に ひとりでも居たら幸せなんだろうと思う。




ちなみに本作は映画好きな父に勧められて鑑賞。
黒澤明やアルフレッド・ヒッチコック、アンジェイ・ワイダなど、巨匠と呼ばれる渋めの監督が お気に入りの父が、まさか この手の映画を娘である私に勧めるとは。
父はサブスク狂で、暇な時間さえあれば ずっとNetflixかAmazonのprimeビデオを観漁っているから、そこで本作を知ったのだろうけど。

この頃の父は(暇が故かもしれないが)ジャンル問わず何でも観るらしい。
インド映画でも韓流ドラマでもアニメでも、何でも。
それって すごいことだと思う。
私は つい独断と偏見で未鑑賞の作品を 初っ端から切り捨ててしまうのだけれども… 良くないよね。
もっと広範囲にアンテナを張っておきたいと思いつつも、つい。
しのごの

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