バナンザ

アメリのバナンザのネタバレレビュー・内容・結末

アメリ(2001年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

オドレイ・トトゥ主演でジャーン=ピエール・ジュネ監督の代表的作品。ナレーションや映画の作り方・表現の仕方を含めアメリの生活や人間性を表現している印象で、終始映像化された夢物語のような雰囲気が漂っていた。
特に早送りと意図的粗野なカメラの動きが、私の中で革新的で興味深かく、アメリが水のように溶けて次のシーンに移行するトランスは一喜一憂するアメリそのものだと思った。


詩的な語りが特徴的で、ゆっくりと流れるようなフランス語に魅了される。周囲に幸せを運ぶことで色づいた世界を情景描写としてアメリが語る35分代はフランス語で理解してみたいシーンである。

アメリが持つ、人々の生活に彩色を加える力と幼少期からのいたずら心が映画全体を通じて際立って、人々の真顔とアメリの無垢な笑顔の対称性が印象深い。その笑顔は名状しがたいが乱暴にまとめて表すと「素敵である」という言葉が浮かぶ。角度をつけた顔のアップは、あごのラインが美しく見えて、可愛らしい眼が強調されていた。アメリと人々の対照性が明確であった分、ガラス男の映画での立ち位置が面白い。大胆で奥手なアメリの背中を押す一挙手一投足が、映画が進むごとに垣間見えてくる。陳腐な日常を送っている人々とは少し距離がある一方でアメリのようなバラ色に色づく世界を見ているわけではない。

夕日に照らされているようなノスタルジックな街の景色が印象深い。
注意深く見ると赤と緑をベースに画面構図が成り立っていることが分かった。赤を基調としたアメリの部屋は、赤いテーブルに赤い椅子、赤いソファーに赤いランプ、赤い壁紙に赤い冷蔵庫が置かれている。働いているカフェでは、皆が赤か緑をベースにしたような洋服を身にまとっていて、ストローやトイレの文字やガラスも赤と緑であった。映画全体の色の調和が取れているので、赤と青をベースにしていたポルノ店が異世界のように感じられた。

アメリカ映画とは異なり感情表現が控えめであるにもかかわらず、直接的な悲しみやよ転びを表さない画面で悲しみや喜びを感じた。

ルノワールの『ムーラン・ド・ギャレット』はパリのモンマルトンのダンス場で楽しむ男女市民を描いているから、映画とのつながりを感じる。映画を通じてルノワールの作品が与える浮遊感を表現しようとしたのではないかと思う。
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