わかうみたろう

コロッサル・ユースのわかうみたろうのレビュー・感想・評価

コロッサル・ユース(2006年製作の映画)
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 この世の終わりを感じさせる金色の陽射しが美しく不気味であった。真っ黒な天空は室内テーマパークの天井のような狭苦しさを感じさせるし、建物の中は迷宮のよう。登場人物が日常を送っている部屋でさえも、斜めを意識した構図が、別の空間を示唆する。登場人物たちは迷宮を迷っている最中に一時の休憩がてら交流を交わしているように見えた。

 夕陽がほぼ常にあることで時間軸が混乱させられ、カットごとの空間はつながりを感じさせられずどの場所も宙吊りになっている印象を受ける。同じカメラ位置で置かれた同じはずの空間でさえ、毎回映されるたびに別の空間であるかのような錯覚を覚える。

 どのカットをため息がでるほど美しいのだが、ラストの方は早くこの閉ざされ時空間から逃げたいと思って観ていた。登場人物はどうやら国か社会かに追いやられてこの場所にいざるを得ないのだろうが、ずっといざるを得ないことにどう感じていたのか。何ともつながっていない孤独はつらそうだが、あの美しい陽射しが感覚を麻痺させてきてダラダラとその不本意な生活を受け入れさせてしまいそうな怖さがあった。

 子供が部屋で遊んでいるシーンのリアリズムがとてつもなく、構図を無視して動く子どもの生々しさが良い。あと、廃墟の道を歩く猫が、登場人物たちの覇気に恐れをなして歩みを止めた序盤のシーンも印象的だった。

 音がイマイチだったかな。