オトマイム

そして僕は恋をするのオトマイムのレビュー・感想・評価

そして僕は恋をする(1996年製作の映画)
4.4
おそらく満席の人いきれの映画館で(通路にしゃがんで観てたおじさんがいたから立ち見が出てたかも)、この作品をみれたのは嬉しかった。TV画面ではかなり印象が変わりそうだと感じたから。

セピアがかった映像/不意のクローズアップ/くされ縁/なり振り構わない女たち。ぜんぶがひどくなまなましい。ゆらゆらと安定しないカメラの視点が彼らのゆらゆらした気持ちを代弁している。マチュー・アマルリックいいな。笑みを帯びたきれいな目と繊細さが魅力的だった。

ひとりの男と3人の女のくっついた離れたの顛末、そこに友人関係やら敵対関係やらも絡んでにぎやか。恋愛感情なのか気の迷いなのか性欲なのか自分でも判別できない/こちらが正しい方向だと頭でわかっていても違う方に流されてしまう/将来が不安なのに無為に過ごす。そんな混沌とした時期があると思う、とくに若い頃は。立派な人物なんて出てこないけど私は誰のことも否定できない。先の見えない苦しかった頃を思いだして少しだけ苦しく、甘やかな気持ちになる。

そして私はこの映画に恋をする。あるいは恋に似たものかもしれない。映画館の暗やみに包まれとけこんでその心地よさに身をゆだねて、いつまでも君をみていたい。