〈午前十時の映画祭13〉にて鑑賞
スピルバーグ作品などで知られたヴィスモル・ジグモンドの撮影が冴えわたる作品。
湿り気を帯びたような映像の質感が素晴らしく、深く柔らかい陰影がこの哀しく寂寞とした物語を鈍色に彩っていく。
冒頭、ジーン・ハックマンが丘を下ってくるショットだけで一気に映画の世界に引き込まれます。
運に見放され社会の片隅で生きる二人の男が路上で出会う。
凸凹コンビはヒッチハイクしながら、華やかさや裕福さと無縁の「寂れたアメリカ」を旅していく。
演じるジーン・ハックマンとアル・パチーノの演技競演も見どころで、特にまだ30代前半のアル・パチーノの色気と繊細な佇まいに目が離せない🤩
この頃のアル・パチーノは「ゴッド・ファーザー」シリーズに「セルピコ」「狼たちの午後」とキャリアの最初の絶頂期で、本作でも普段は明るくお調子者だが心の弱さを抱え不安定さを隠しきれない男フランシス“ライオン”を俳優としての技量を出し尽くすような迫力で演じています。
アメリカンニューシネマの典型のような物語で、今観ると古いと感じる部分も多いのですが、脂の乗り切った名優二人に思う存分芝居をさせて、それを腕利きのクルーがフィルムに収めていく。
そのコンビネーションは今も私達に映画を観る悦びを味あわせてくれます。