Junichi

ガンジーのJunichiのレビュー・感想・評価

ガンジー(1982年製作の映画)
4.0
「暴力は西洋の持つ不幸だ。それを輸入するのは進歩ではない。」

【撮影】8
【演出】7
【脚本】8
【音楽】7
【思想】10+

インド建国の父である
マハトマ・ガンディーの人生を描いた作品

若き弁護士時代に
南アフリカの列車で経験した人種差別
イギリス製の布製品に対する不買運動
非暴力という抵抗運動に向けられた虐殺
それでも
非暴力という抵抗を示すために行った行進

ガンディーの有名なエピソードを中心に
彼の非暴力という思想を描き出します  

非暴力は
暴力をふるう相手の尊厳を尊重し
その人の理性を信じるという
究極の抵抗です

自分も相手と同様に
暴力をふるいうる可能性をもった在であること
このことを自覚した厳しい態度です

そして同時に
戦争を起こさせないための高度な戦略でもあります

作中では
キリスト教宣教師との交流が描かれることで
【愛】が全ての宗教の本質であることを
ガンディーが見抜いていたことがうかがえます 

日本に限らず
反戦平和運動は時に暴力的な言葉や行為を招きます
団塊世代が若かりし頃に起こした学生運動は
凄惨なリンチ事件によって世論の反発を招き衰退しました

現代においても
とりわけネット空間では
お互いを「パヨク」「ネトウヨ」と蔑称で呼びながら
分断と対立を煽る言論が垂れ流されています

このような状況で改めて求められているのは
【寛容】ではないでしょうか

【寛容】であるためには
思想の【中庸(バランス感覚)】が大切です
そしてなによりも
心が健康で気持ちに余裕があることが大切です

物やお金ではなく
心の余裕です

右でもなく左でもなく真ん中です
右に寄ったら左に重心を
左に寄ったら右に重心を

そのためには
無用な分断と対立を煽る政治家、学者、芸能人、コメンテータ、インフルエンサの言論を絶つことです

ガンディーが晩年に暗殺される原因にもなった
ヒンドゥー(インド)とイスラム(パキスタン)の分断対立

ガンディーがイスラムに寛容の態度を示したことが
過激なヒンドゥー教徒からの反発を招きます

ここに【寛容】の実現の困難さが示されています

しかしながら
ポスト・コロナの時代を考えたとき
【寛容】の態度の重みは増すと思います

【寛容】こそが
あらゆる宗教、実践哲学(倫理学)
をつらぬく本質だからです

ポスト・コロナを生きる
すべての人に本作品をオススメします
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