Omizu

リリーのOmizuのレビュー・感想・評価

リリー(1953年製作の映画)
3.6
【第26回アカデミー賞 作曲賞(ドラマ・コメディ)受賞】
『イースター・パレード』のチャールズ・ウォルターズ監督✕『恋の手ほどき』レスリー・キャロン主演のファンタジックロマンス。アカデミー賞では監督賞他全6部門にノミネート、ドラマ・コメディ部門作曲賞を受賞した。

話自体は見た目の華やかさとは裏腹にかなり暗い。しかしラストのミュージカルシーンが素晴らしく、終わりよければという感じ。真の主役はリリーではなくポールだと思う。

ミュージカルだと思っていたが、実際観てみると歌うのは主題歌「ハイリリー・ハイロー」のみ。ダンスシーンはあるが、ファンタジックなロマンスドラマと言っていい。

田舎から父の友人を頼って出てきたリリーだが、その友人は亡くなっていた。たまたま出会ったサーカスのマジシャン、マークに一目惚れするが相手にされない。密かに彼女に惚れた元ダンサーで人形使いのポールは不器用に彼女をバックアップする…

ポール→リリー→マークという三角関係が主軸となっていて、そこにリリーの成長やポールの葛藤と不器用な愛が加わるというシンプルな構造。

レスリー・キャロンは16歳の設定(実際は23歳)には流石に無理があるが、ダンスシーンを観ると非常にスタイルがよく画面に映える。スタイルのいいジュディ・ガーランドのような出で立ち(というと失礼?)な気がする。

ひたすら子どもで鈍感なリリーにイライラするのは正直ある。リリーに共感があまりできない。

そんなリリーそっちのけで共感してしまうのは人形使いのポール。ダンサーとして有名であったポール、しかし戦争で足を負傷しサーカスの人形使いに。そのやるせなさ故に人にキツくあたってしまう。リリーに惚れているのに人形を通してしか優しくなれない。そんな不器用さがいじらしい。

演じたメル・ファーラーのスタイルが抜群にいい。ラストのダンスシーンでは足の長さが驚異的!体の2/3が足!メル・ファーラーはオードリー・ヘプバーンの元夫だそうで。なるほど。

カラー撮影で撮られた映像は童話のように鮮やか、マジックの見せ方や中盤とラストのダンスシーンの撮り方もとてもいい。

サーカスと貧しい娘、そして戦争という暗い背景がありながらも、クラシックに上手く演出された純愛がなかなかよかった。
Omizu

Omizu