【第67回アカデミー賞 作品賞他全4部門ノミネート】
『普通の人々』ロバート・レッドフォード監督作品。英国アカデミー賞では脚色賞を受賞、アカデミー賞では作品賞他全4部門にノミネートされた。
非常によく出来た作品。サスペンスとしても人間ドラマとしてもいいバランスで保たれていて、特に最後の余韻を残す終わり方が上手い。レッドフォードは監督としての腕は本当にある。
本筋ではないけどバリー・レヴィンソンやマーティン・スコセッシが俳優として出ていてちょっとクスッとした。それがちょっとノイズになったのは否めないが。
八百長疑惑に揺れるクイズ番組を立法管理捜査官の視点から描いている。それだけではなくユダヤ人を中心とした人種問題にも発展していく視野の広い作品にもなっている。
疑いを持ちつつもヴァン・ドーレンの人柄に惹かれていくディック、一方的な断罪映画にはしていないその描き方が見事だ。テレビ業界の欺瞞を暴きたかったのにヴァン・ドーレンという人物にばかり光が当たってしまうという大衆心理が愚かしい。
レイフ・ファインズはやはり名演、ジョン・タトゥーロをはじめとするキャスト陣も頑張っている。
少し長めの尺ではあるが、その価値はある。最後まで緊張感を持って演出したレッドフォードの手腕は確かだ。2012年『ランナウェイ』を最後に監督作はないのが残念。もっと撮ってほしいなぁ。隠れた名作。