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ツィゴイネルワイゼンのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
4.6
初、鈴木清順。邦画の艶かしい死のにおい、からみつく女の情念、瞽女の泣き唄にササラ。彷徨う死霊と根なし草を吸い寄せては押し返す女の白い肌のその芯。日本の熟した芸術を観た満足感でいっぱいです。

四人の男女の情念の物語。はじまりはツィゴイネルワイゼンの呟きから。謎解きは一人では解けなかった。

いくつもの哀しみを和音にして、
砂漠で呻く原田芳雄のブルース、
迷える魂を慰める瞽女の唄、
ロマの旋律ツィゴイネルワイゼン、
どれも故郷に帰れない風の音。

情念の表現にぞくぞくする。
ちぎりこんにゃくの山
桜色の骨
塵と舌

大楠道代の食べる姿がエロチック。

大谷直子の白い肌は陶器のようにひんやりとし、透きとおっていった。

原田芳雄より藤田敏八の困惑と苦悩の表情に色気を感じてしまう。

海辺の洋館、鎌倉の屋敷。切通は霊界への通り道。

『雨月物語』を思い出した。

彷徨う霊より、生きながらも迷える魂の方が苦しみを負っていた。
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