ゆみモン

銀心中のゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

銀心中(1956年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

出征した夫の戦死広報を受け取った後、妻が別の男と再婚し、その後戦死したはずの夫が帰還する…。
そういう話は、戦後珍しくなかったと聞く。確かにフィリピンの山奥で誰がいつどのように戦死したか…なんて情報が間違って日本に届くということは、十分あり得ることだろう。

この物語も、そんな誤報が招いた悲劇だ。

理髪店を営んでいた、宇野重吉と乙羽信子演じる夫婦と、長門裕之演じる甥。
出征した男二人だが、夫の戦死広報を受け取り、残された妻は、その後復員してきた甥と結ばれる。
そして…夫が生還。
優しい夫は、戦死広報が届いたのだから仕方ないことと、二人を責めることなくまた夫婦に戻ろうとする。
妻を忘れられない甥は、叔父さんに申し訳ないと、想いを断ち切り妻の元から去っていく。
妻は、甥を忘れられず、何度も家を出て居場所を探し会いに行く。

乙羽信子演じる妻の情念というか執念というか、男への想いが凄まじい。それを、貞淑な妻という風貌の乙羽信子が演じるからこその、リアリティと凄みだ。

誰のせいでもないだけに、3人それぞれの辛さが切ない。

雪深い温泉宿の従業員を演じる、殿山泰司がいい。
「みんな戦争が悪いんだ」「なんで一緒に死ななかったんだ」という台詞が沁みる。