Jimmy

推手のJimmyのレビュー・感想・評価

推手(1991年製作の映画)
4.2
アン・リー監督『父親三部作』の1作目。
これまた素晴らしい作品だった。

舞台はアメリカ、息子夫婦の生活に1ヶ月前ふらりとやってきて一緒に住んでいる父親。
息子は台湾出身でアメリカにやって来て勉学に励み、アメリカで一生懸命働いており、妻は金髪のアメリカ人女性。二人にはひとり息子が居る。そこに、父親がやってきたのだ。妻は本を執筆しており、中国語しか話さない夫の父親の存在が邪魔して、執筆活動に集中できない日々。

父親は、書道が上手く太極拳の極意を身に付けており、とくに推手(すいしゅ)なる術が見事。
太極拳の先生をしているが、そこで陳夫人と出会う。二人とも、アメリカで似たような環境になっているのでウマが合う。

この映画、父親も陳夫人も「老いてもプライドは持ち続ける」あたりが人間として大事なことだと思った。
自分の存在を軽視する人には厳しく接する態度が見事。例えば、「老人を皿洗いに雇ってやったが、こんな奴いつでも辞めさせられる」などと思っている料理店オーナーに対する姿勢は良い。
また、陳夫人が「ウチの娘とあんたの息子が結託して、私達をくっつけようとしている。そんなの馬鹿にしている!」と言えば、老いた父親は家を出て行き一人住まいをするようになる。これまた、老人のプライドのあらわれ。

人間だれしも老いる、その時にどういう態度で接するかは人間として大事であり、この映画はそうした構図を切り取り、映像・物語・音楽で伝えてくれる。
素晴らしい映画。
Jimmy

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