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エイリアン/ディレクターズ・カットのtorumanのレビュー・感想・評価

4.4
映画史に残る究極の映像世界

公開当時に鑑賞、ディレクターズカット版は初めてです。

エイリアンシリーズほど、数多くの名監督を生んだ作品も珍しい。(打率10割!)
各作品がエイリアンという題材だけを残して、監督の得意ジャンルの作品になっている事も面白い。
2作目はジェームズ・キャメロンのアクション、3作目はデヴィッド・フィンチャーのサスペンス、4作目はジャン=ピエール・ジュネのブラックコメディ

記念すべき1作目は、リドリー・スコット監督。
ジャンルはホラー
でも監督はこの作品以外は、ホラーは撮っていない。
つまりは、この作品にどれだけ優秀なスタッフが揃ったのかという事です。

石油コンビナートがつながったような宇宙船ノストロモ号の造形、コールドスリープの睡蓮の花びらのようなデザイン、縄文式土器(土偶)のような宇宙服、異星人の宇宙船の有機的でエロティックなデザイン。
エイリアンの3段階の変身デザイン。
全てが美しく芸術的。
その後、エイリアンもどきのデザインが模倣されるが、未だに唯一無二の魅力を放っている。
エイリアン側のデザイン:スイスの天才HRギーガーの悪夢に出てきそうなデザイン。
地球側のデザイン:メビウスは、日本の大友克洋や宮崎駿に影響を与えた。
彼らが担当しなければ、エイリアンの成功は無かったと言っても過言ではないでしょう。

SOSを受け取った貨物船ノストロモ号の乗組員が、未知の生物にとりつかれ、宇宙船内で孵化、乗組員が1人また1人襲われていく…
宇宙船の不気味な内部を、お化け屋敷に設定し、サバイバル劇をゴシックホラーにしてしまったアイデアは、ダン・オバノンの脚本の力でしょう。

当時、脇役の俳優と無名俳優でそろえたキャスティングの中で、シガニー・ウィーバーというスターの誕生。
女性が最後に残り、ヒーローのように戦うのもこの作品が始まり。
撮影時は「エイリアンが現れる」のみ表記した脚本で、宇宙船内でドキドキしながら演じており、神経衰弱になったとの事。
当時は監督とも仲が悪かったそうです。

監督の力というよりも、周りのスタッフの奇跡的な連鎖により世に生まれた作品だったと思います。
(リドリー・スコット監督ファンの方々すみません)
それでも作品としての魅力は圧倒的、何度も鑑賞してしまう強靭な力を持った作品です。
あまりシリーズを量産して作品自体を疲弊させて欲しくないなと危惧しています。
(2作目で終わって欲しかった🥲)
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