Sung

破戒のSungのネタバレレビュー・内容・結末

破戒(1962年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

僕は今まで感じてきたものにどれだけ恩義を送って来れたか。
僕はきっと心の底で、助けを呼んでも誰も来なければいいと思ってる。塵やほこりを吸って自らを蔑める行為がなんて軽率なことか。
風間はきっとそういう人間への皮肉も担って瀬川と対比させているんだろうな。

瀬川丑松がなぜ部落民の噂が飛び交う中猪子への周囲の否定を許さず最後は自らの告白に至ってしまったか。言わなければ明かされることはなかったのに。
この物語の背景は詳しくない。でもその心情の変化に苦しいほど共感した。
猪子は殺されたけど、もし殺されなかったとしても瀬川が猪子に自分を偽ったあの場面がクライマックスだったと思う。
告白があまりに辛くて悲しくて久しぶりに泣いてしまった。

飯山を去る時猪子の奥さんが彼の遺骨を抱えながら、「人間の骨ってこうも重いものか、それとも重いのは納めてある壺の方かしら」と瀬川に言って品のある笑顔を浮かべるのが素敵だった。鳥肌が立った。
お志保さんとの別れの場面、瀬川がフレームインして向き合う絵が印象的で素晴らしかった。ついでに土屋がお志保さんに「瀬川はあなたのことを懐かしいと思ってる」って言ってお志保さんが少し微笑みながら「私はもうそのつもりおりますんですのよ」ってのも麗わしゅうございました御馳走様でしたですのよ。
因みにお志保さん役で映画デビューの藤村志保はこの役名と原作者の島崎藤村が芸名の由来なんだと。ラストで完全にお志保さんに心を持ってかれた身としてはこれは解せない。すごすぎ

雪の中、舞台のような言葉使いの中に激情も表現せず静かな作品なのに場面を一つ一つ心に刻みつける。市川崑は映像ではなく言葉使いで場面を区切る。カメラは人と人との隔たりを写してる。
Sung

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