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エターナル・サンシャインのvioletのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
4.5

感情移入しすぎて苦しい…

記憶って厄介だ。思い出したいことは思い出せないのに、思い出したくないことは思い出す。ほんの些細なキッカケが、数ヶ月前のこと、数年前のこと、数十年前のことを音速で呼び起こす。自分の記憶の引き出しって、全部でいくつあるんだろう。いったい自分は何を憶えていて、何を忘れているんだろう。

"思い出す"という脳の反応には抗えないから、人は忘却を試みる。しかしそんなことは到底不可能。忘れたいことに限って、忘れられないから。忘れたいと思っても、脳と体全体がそれを拒否するから。

そもそも記憶を消去することは、その人を完全に忘却できていると言えるのかな? 自分という存在は、少なからずその人の影響によって変化しているわけで。だから記憶が呼び覚まされることはなくなっても、自分の中にその人が生き続けているっていう事実は変わらないんじゃないかな。その人の所在は自分の記憶の中だけに留まらない。本当の意味で"忘却"したいなら、タイムスリップでその人と出会う前の自分に戻るしかないんじゃないか…?

そんな非現実的なことを延々と考えてしまって脳がショートしそうになっていたら、やっぱり結論は「荒治療は無意味だ」っていうことだった。ああ救われた。そうだよね、忘れたいなら忘れたいと思わないこと。忘れたくないなら忘れたくないと思わないこと。悲しい記憶には、強がってでも無理をしてでも、自分で闘っていかなくちゃいけないんだよね。記憶の方から私を諦めてくれるぐらい強く居るしかないんだ。頑張ろう。
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