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エターナル・サンシャインのCのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
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衝動的なきみは、きみの中からぼくを、ぼくとのすべてを消し去った。ぼくの顔を見ても知らん顔、おまけに恋人ヅラした若い男と仲良さそうに話してる。ぼくとの辛い過去を消したかっただって?ぼくは散々きみに尽くしたのに、よく言うよ。明日はバレンタイン、きみのいなくなったひとりの夜に、ぼくはぼくの中からきみを消すことに決めた。



見たことのある景色、あのひとがぼくに向けて言う言葉が、一字一句間違えずに言える。ああ、ぼくはいま、ぼくの脳内にいるんだ。これから彼女との思い出を消していくのか。凍った池の上での夜のピクニックも、初めて出会った日の冬の海ときみのタンジェリン色したクールなパーカー姿も、デートに誘いに行った日のことも、酔っ払って帰宅したきみとの最後の会話も、楽しかったことも、傷付け傷付きあったことも、ケンカしたことも、すべてぼんやりと、少しずつ輪郭を失いながらぼくの中から消えていく。…ベッドの中で涙するきみの姿はとても美しく、愛おしかった。お願いだ、この記憶だけ、この瞬間だけはぼくの中から消さないで。


消し去ってしまいたいと思ったものは、振り返って見てみたら、ほんとうは大事なものだった。ぼくの中に留めておく必要のあるものばかりだった。目が覚めたらぼくは、また明日のきみと出会いたい。ぼくはきみが好きだから。だから、どうかきみのことを忘れないでいたい。




ケンカして距離が出来たり、相手の嫌な部分が目についてしまったり、一緒にいることにむなしさを感じたり、笑顔にすら嫌気が差したり。どうして好きで一緒になって、好きで一緒にいるはずなのに、こうなってしまうんだろう。いつから、どうして、こうなっちゃったんだろう。気付いた時には、取り返しのつかないところにまでやってきて離れてしまうこころ。エンディングで流れる歌にハッとする、〝change your heart〟。見失いそうになったときは、見方を変えてみるのがいいのかもしれない、失ってから気付くには遅すぎる。


いつ観ても、何度観ても、どうしても泣いてしまう。ひとを想う気持ちと、恋の痛みでさえも大切にしたくなる。ジムキャリーのビー玉みたいなまあるい目に吸い込まれて、いつも心を鷲掴みにされてしまう。あぁ、大好きでたまらないよ。
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