櫻イミト

デッドエンドの櫻イミトのレビュー・感想・評価

デッドエンド(1937年製作の映画)
3.5
ウィリアム・ワイラー監督による犯罪ヒューマン映画。同名ブロードウエイ舞台劇(1935)の映画化。スタッフは前年の同監督「この三人」(1936)と同じく脚本リリアン・ヘルマン、撮影グレッグ・トーランド、音楽アルフレッド・ニューマン。「Dead End」は「行き止まり」の意味。

大恐慌時代のニューヨーク。イースト川で行き止まりとなる通りはスラム街と高級マンションの境界線で不良少年たちの溜まり場となっていた。工場勤めのドリーナ(シルヴィア・シドニー)は、弟を養いながらいつかこのスラムを出たいと願っている。幼馴染みのデイヴ(ジョエル・マクリー)は苦学して建築科を出たが仕事がなくペンキ塗りで食いつないでいた。ある日、デイヴの旧友で今では凶悪ギャングとして追われているマーティン(ハンフリー・ボガード)が整形して街に戻ってくる。危険を承知で母と昔の恋人に会いに来たのだが。。。

スラム街を舞台に始終重苦しいムードが続き、楽しくはないが人間ドラマとしては見応えがあった。ラストのささやかな希望が救い。

前半はスラムの少年たちの荒んだ日々が厚めに描写される。隣の高級マンション階上のパーティーを見上げさせることで、貧富の差とデッドエンド(=行き止まり)な状況を徹底的に示していく。ボガード演じるギャングが恋焦がれていた幼馴染は売春婦に身を落とし金をたかってくる始末。この環境下で少年たちはギャングに憧れ今後も悪循環が続くことが予感される。

あまりにも絶望的でどのように現状打開の物語に転じていくのか読めなかったが、シビアさは保ちつつ前向きな光が差すラストの落としどころは見事で、シナリオ演出の巧さが感じられた。

冒頭から登場する橋のたもとの下町スラムの撮影描写は同年代のフランス詩的リアリズムを連想。フランス出身のワイラー監督がハリウッドから呼応したようにも思われる。スラム街をまるごと再現した巨大セットは大きな見どころであり映画に説得力をもたらしていた。

※少年たちを演じたのは映画初出演の子役グループ “デッドエンド・キッズ”。彼らは翌年の「汚れた顔の天使」(1938)にも同様の設定で出演。ボガードも悪役で共演している。

※シルヴィア・シドニーは同年に「暗黒街の弾痕 」(1937)で主演
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