大阪でのらりくらりと暮らしているチンピラ(なべおさみ)と、単身神戸にやって来た朴訥な少女(緑魔子)が、社会に適応することができない現実に打ちのめされてしまう。社会的底辺部とされる人間たちの悲喜を描いている、ヒューマン・コメディ。
本作の登場人物には、「生まれもった運の悪さ」という、底辺(除け者)になった理由付けが存在している。自分の力ではどうしようもできない立場が、本当の意味での負け組であり、外界へと飛び出していく精神性が大事であることが説かれていく。
役者陣では、主人公のチンピラを諭そうとする先生(有島一郎)とトルコ風呂のやり手ババア(ミヤコ蝶々)が脳裏に焼き付く。丁々発止の掛け合いがとても面白く、含蓄のある台詞の応酬にハッとさせられる。
封建社会の在り方を問題提起として織り込みながら、男女の性差の違いから人生哲学を説いていくスタイル。これは、後年の森崎東監督作品に引き継がれていく。森崎東入門編としても最適な作品。