ブルジョワの初老の男性が年若い美女(タイプの違う女優の二人一役)に翻弄される物語。面白かったし笑った。欲望や恋愛の対象はその都度取り換え可能で、いくら本人が「この人しかいない」と執着しても結局は誰でもいいのではないか、という強烈な皮肉にも思えた。逆にコンチータはマチューを手玉に取って楽しんでいるだけのようにも見えるが、根底の部分ではそうでもないような、これまた曖昧な描かれ方をしている。街中ではテロが頻発するが、そんなのどこ吹く風で恋愛ゲームに夢中になっている男女の姿が限りなく滑稽に見える。何度も登場するズタ袋といいテロ行為といい、深読みしたがる観客を嘲笑うかのような監督の仕掛けに、大いに楽しませてもらった。