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フェリーニの道化師のフォスフォのレビュー・感想・評価

フェリーニの道化師(1970年製作の映画)
3.9
もの悲しくていいなあ。やっぱり変なひとたちをちゃんと正面から書いてくれるってのは好感がもてる。時代が変わって、市井に溢れていたオカシな人たちが病院にぶちこまれ、道化師のサーカスは衰退していく。道化はみる/みられるの関係性のもとで街のあらゆる階層の住人に笑われながら、けどもその実、日常的な価値を脱臼させることであらゆる階層の住人を逆に笑っている。その証拠の、中盤の道化が並んでガヤガヤ言い争うカット→ガヤガヤ言い争う偉そうな背広のお得意さんに切り替わり重なるショットがシニカルでいい。

ありきたりで間延びした日常に、道化は笑い笑われの祝祭空間を発生させる(序盤辺りの街で笑われてる道化たち)。けども、近代からでてきた病院その他に代表される知性が、ひとしなみに彼らに〈異常〉の烙印を捺して狭い病室に閉じ込めてしまう。道化師たちの居場所はそこにはないし、だから「皆道化師たちをもっと笑うべきなのだ」みたいな台詞が入る。サーカスの存続すら危うくなった道化たちは皆何だか寂しそうな表情だ。そのためにフェリーニ一行がふたたびサーカスを企画するわけだけども、ラスト辺りの消防車でてきてぐるぐる回って、吊られた男がテントの天蓋に回りながらのぼっていき、カラフルな糸がパッと花咲くみたいに下がってきて音楽が止むところがとても美しい。そこから道化師のひとりが「楽しかった」って言って、サーカスからは誰もいなくなり、灯りも徐々に消えて、暗いスポットライトに当てられながらトランペットが吹かれて終わる。この時代に彼らの居場所はないみたいだ。
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