shen1oong

転々のshen1oongのレビュー・感想・評価

転々(2007年製作の映画)
3.5
5月の課題映画。
三木聡さんはシティボーイズにも関わっているという、80年代からの東京の笑いの一つのスタイルを作り出した人で、その人が作品を作るとこうなるという。
面白い部分は多くあるし決してダメな作品ではないけども、コメントとしては辛くなってしまうのは自分がこのスタイルがすでにポピュラーになった後の世代だからなんだろうと思う。
例えば登場人物たちの動機と行動と結果ぎ全く「繋がらず」そのまま並行して終わる、といった展開や、突拍子もないキャラクターが必然性なく登場し、そのまま去っていくというシークエンスは出てきた当初はある意味で都市の空気にも合っていて(静かな演劇のパイオニアの岩松了が出ているのもふくめ)新鮮ではあったのだと思う。そこに対して最後に残るのがセンス一発というのも、たとえば自分が若くてセンスがあると思っている人間であったなら、自分もこれをやって世に出てやる!とでも感じ得るものはあっただろう
でもじつは歳をとってから気づくのは、この手のセンスの手捌きというのはその人個人の才覚よりも生まれ育ちの文化資本による蓄積の要素が非常に高く(カメオ出演で麻生久美子を出したいと思って出せる人はそうそういないでしょう)もっというと放送作家を集めてネタ出しをして、それをまとめてしまえば、むしろ脈絡のない以上まとめすらしなくても作品としては成り立ってしまうものなのだ。逆にいえばカメラを止めるな!が伏線をちゃんと回収するという緊密な構成であるのは、資本のない若者の戦い方としては圧倒的に正しかった。
すでに10代で完成している吉高由里子の凄さなどを感じるにはとても良いのだけども
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