隠れ切支丹たちはどうして踏み絵を踏まなかったのか、みずからの生を擲ってまですがった信仰とはいったいなんなのか。その裏側には死や懲罰を恐れてやすやすと転んでしまった者はどのように以後の生を生きたかという問いが横たわっている。自分の弱さから仲間を何度も売ってしまったキチジローの贖罪意識は、最近のスコセッシ版でもあったが、このヴァージョンでもすぐれて描かれている。台湾でロケをしたスコセッシとちがって、長崎ロケで遠藤周作本人が脚本にたずさわった本作は、より原作に忠実。なにより風光明媚な風景と主題の重苦しさの対照が鮮烈。