くじら

黒猫・白猫のくじらのレビュー・感想・評価

黒猫・白猫(1998年製作の映画)
3.1
ハッピーエンドの暴力性を信じきったパワフル冠婚葬祭コメディ。

黒猫と白猫が、明るい地獄の観測者となり、最後は若者の地獄からの出港を証明させられる。
「結局見ている私たちは黒猫/白猫の立場でしか祝祭に参加できない」と思わせながら、最後に交尾する黒猫/白猫を見ることで「おい、ウチらも地獄の文脈だよな笑」と笑うことしかできない。

音楽がとにかく愉快。ほとんど劇中の人間と私たちは同じ音を聴いている。喧騒と区別のつかない音楽たち。

ハッとする劇中音楽の使い方が、画面内で無作法に展開される祝祭に拍車をかけて、ハッピーエンドへの動力になる様が面白い。

結婚パーティーとドラッグ乱痴気パーティーのBGMが交互に聴こえながら、父親の死体(…)を隠した屋根裏ではゆるく混ざり合っているところに、死者のステージを特別視しているような印象を覚えた。死者は死者と、生者は生者と。

テーマや画角構成が好みではなかったぶん乗る気はなかったのに、最後はなんだか良いものを見たような気分にさせてくるのが、この映画の魅力がエネルギーに宿っていることの証明だ。
くじら

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