垂直落下式サミング

ドカベンの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ドカベン(1977年製作の映画)
3.7
漫画の実写版が流行りの昨今、その元祖であり先駆とも言えるのが本作。
漫画実写は配役を原作に近付け、役者や監督が原作の世界に入り込んむことで、いい作品に仕上るお手本を示している作品だ。
作家や俳優の自己主張を抑制して、アニメの作風を損なわないようにした意図が随所に見受けられ、非常に好感が持てる実写版である。主題歌もアニメと同じテーマソングを使用し、同じドカベンであることを強調して、主に原作初期の柔道編を描いている。
主人公はオーディションで選ばれたという、まさに山田そのものな男子。ドカベンの魅力はなんといっても主人公の地味さだ。普段は何を考えているかわからない冴えないデブが、実はめちゃくちゃスゴイというキャラ設定に熱いものを感じる。イワキや夏子はんも、かなり寄せていい感じ。徳川監督に至っては、原作者の水島先生が熱演していて、あの時代の漫画家らしく、とてつもなくエネルギッシュである。
鈴木則文監督らしい大らかな作品に仕上がっており、漫画ならではのトンデモ描写を一ミリの妥協もなく実写で演じきった娯楽性の高さは相当なもの。東映屈指の実験映画と言える。