せびたん

ラバーのせびたんのレビュー・感想・評価

ラバー(2010年製作の映画)
4.5
うん。私はおもしろかったです。
とても微妙な言い方ではありますがこれ以上正確な言い方はないような気が。

内容はめっちゃくだらないのに、作り?構成?がしっかりしてるんでついじっと見入ってしまうのが腹立ちました(←褒めてます)

タイヤが主人公のシュールな・ホラー仕立てのコメディでした。念のために申しますとタイヤというのは人の名前ではなくて。車のタイヤのことです。
そうなんです。荒野に捨てられた車のタイヤが主人公なのです!そのタイヤが突然自我を持ちまして自走し始めるところからこの作品は始まるのです!ええ、この世の中にはそんな映画が存在するのです!ビバ、自由主義としか言えないです。こんなもんを金かけて制作した勇気にはヒューヒュー言いたい気分です(←褒めてます)

タイヤが主人公なので心理描写はほぼありません。徹底した客観描写が続くので良質なウエスタン映画とかマッドマックスみたいな乾いた感じが出てました。小説でいうとハードボイルドですね。あるいはロブグリエの延々と続く客観描写みたいな?でも映ってるのは自走するタイヤだっていう…。

爆笑できるシーンはないけれどじわじわにやにやできるシーンがずっと続きます。

ほぼ唯一の心理描写はマッドマックスみたいなフラッシュバックでした。タイヤの過去がちょっとだけ分かります。
分かったところで作品に深みが増すわけではありませんが。普通の商業映画ですとタイミング的にはそういうエピソードが入ってきてもおかしくないところでタイヤがフラッシュバックしますので、やっぱ腹立ちます(←これも褒めてます)

あとは冒頭の詭弁が笑えます。
『理由がないことこそ表現の最強要素だ』ということを証明するために、歴史上の名作映画を事例に並べていくのですが。

「ある愛の詩のふたりはなぜ恋に落ちた?理由はない!」→たしかに説明なかったな笑。けどまあそこがメインの話じゃないからくどくど説明することでもないじゃん。
「ETはなぜ茶色い?理由はない!」→いやこれは何かあるだろ?ステレオタイプをあえて採用したとか。むしろスピルバーグは理由がないことをできないタイプの人だからおもしろくな…安心して観れるわけでしょ?

みたいにいろいろ突っ込めて楽しいです。

みなさんもぜひ!この理由のない世界をご覧になって見てください。
理由がないとはなんて可能性に満ちた豊かな世界なのでしょうかっ!
せびたん

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