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混血児リカの一のレビュー・感想・評価

混血児リカ(1972年製作の映画)
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酒でヤキが回った中平康と何でヤキが回ったのか新藤兼人による無茶苦茶な、あまりに無茶苦茶なストーリーテリングを試しに百歩譲って観てみれば、劇画で例えれば小さいコマは捨てて大コマの箇所だけをひたすら繋げたような、つまり「ここを見ろ!」という部分しかない不親切なサービス精神の塊みたいな映画なのである。だから、よくわからないけど大変楽しいです。ラスト「リカ何処へ行く リカ頑張れ!」という『カルメン純情す』オマージュのテロップに何らかの深い意味を読み取るべきなのか。主演・青木リカが歌とダンスを長々披露するシーンで使われる曲はなんと筒美京平作(主題歌と挿入歌を収めた7インチシングルは1万を越えるプレミア値がついている)。中平にとっても新藤にとっても筒美にとっても友情出演・内田良平にとっても、みんなの輝かしい汚点。

2022/5/1
中原俊『ボクのおやじとぼく』
森勝の撮影も相まって、中原俊の映画偏差値の高さが序盤からヒシヒシと伝わってくる贅沢な児童映画だが、83年にしたってこんな強い父親像はアナクロだろうし、ある程度の点検は為されているものの非常に保守的な話ではある。少年が忍者に変身したり、空想の新居に足を踏み入れたりするシュールな演出は楽しい。予算の範囲で設計し直された図面を見た少年の「子供部屋が、ない!」という劇中唯一のモノローグ最高。武田一成作品でもそうだったし日活児童映画の伝統なのか何なのか、ケンカ(暴力)のアクションに容赦がなくちょっと心配になる。おなじみのロマンポルノ男優の動員が多めで楽しい。
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