だいごろー

喜劇 女生きてますのだいごろーのレビュー・感想・評価

喜劇 女生きてます(1971年製作の映画)
4.5
@神保町シアター


森崎東の喜劇と言う名の人生賛歌。

これは特出しヒモ天国並みに素晴らしかった。


猥雑さの中から溢れ出てくる生のエネルギー、人間の底力、それこそが森崎東の映画だと思うんですが今作も凄いです。


身寄りのないものたちが集まる新宿芸能社。誰もが血の繋がりはなく、そこに留まるのも一時的でいずれ皆んなバラバラになる覚束ない関係、場所のはずなのに、そこには笑いがあり、決して湿っぽくならない。それを担う森繁の懐の深さ。

短大卒のインテリストリッパー幾代、任侠かぶれの梅本、頭の少し足りないポチ(めっちゃ綺麗だと思ったら真理アンヌの妹だとか。納得)などキャラ立ちが異常に良くて、特に幾代は抜群のセンスで劇場の笑いを掻っ攫ってた。凄い。

幾代と藤岡琢也の初めての晩のエピソードが秀逸で、処女でくそ真面目な幾代は事に及ぶ前にきちんと結婚すると誓約書を書かせようとするが、収まりの効かなくなり早くしたい藤岡の慌てっぷりが面白い。セックスする2人(めっちゃうるさい)の横でポチが藤岡の息子の耳をそっと塞いで幸せそうに眠るシーンはこの作品随一の名シーンだった。しかもこれは後の特出しヒモ天国のあるシーンと重なるところもあり大変感動した。その翌朝の藤岡の清々しい顔が最高。

好子と梅本の関係性も良かった。異常に嫉妬深い梅本のせいで全く上手くいってないように見える2人の関係は、過去のある出来事を知る事で違う捉え方ができるようになる。
2人の繋ぐ手が過去、現在、未来へと連なって映画の中で展開される時、心の底から2人を応援したい気持ちになった。

他にも365歩のマーチの使われ方とか家を破壊するシーン、ヨイショの掛け声とか語りたいことが尽きないけどきりがないのでおしまい。

もう一回観たい。