垂直落下式サミング

幕末残酷物語の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

幕末残酷物語(1964年製作の映画)
4.3
残酷なスラッシャー映画であり、華々しく描かれることの多い新撰組の暗黒面を描いた異色の時代劇といわれているようだ。
剣の腕が立たず気も弱い大川橋蔵がなぜか新選組に入隊することとなり、厳しい掟に縛られながら稽古と見廻りの日々を経るうちに鍛えられ、ついには粛清の首斬役を引き受けるまでに出世し、組織に順応していくようにみえたが…という話。
「ウチにザコは要らねえから殺し合え」っていう血みどろの入隊試験は、同じ志望者を三人打ち倒したら隊士が相手をして、それに勝ったら考えてやるよ(入れるとは言ってない)というダーティなもの。そこで試験官に気に入られた本来マッチョ的な資質でない男が特例で合格し、その環境に身をおくうちに掟のもとに上から命じられれば何でもしてしまう人になっていく様子は、戦争映画の新兵ものを想起させる。
とにかく怖い土方歳三と山崎烝、さらにその上に座する近藤勇の荒くれたちを束ねあげる剛頑な佇まいが印象的だ。見習い期間を終えた主人公たちが、配属を言い渡される時の隊長たちがこれまたクッソ怖い。人格者の原田佐之助率いる十番隊のアットホームな雰囲気とくらべて、隊長の沖田総司が病気がちなためか、腕さえ立てば侍としての品位は問わなれない一番隊のならず者のヤンキー集団っぷりにビックリ。幕末はろくでもねえ。