垂直落下式サミング

デンデラの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

デンデラ(2011年製作の映画)
3.5
姥捨山アベンジャーズ対クマ。
集落のしきたりで山に捨てられた高齢女性たちが身を寄せあって、「デンデラ」なる集合体を形成し、自分達を捨てた村への復讐を画策しながらひっそりと暮らしていたところに、腹ペコのクマが彼女達の集落を襲おうと現れる。老婆がクマに立ち向かうアニマルパニック。
日本原産インディーズの香ばしい雰囲気がぷんぷんする作品。案の定、それなりにチープで、それなりに絵力があって、どっち付かずに社会風刺っぽい。そんなこんなで愛おしい一本。
クマちゃんとの戦闘シーンは、ヌイグルミ丸わかりのかわいい感じになっているけれど、これが意外に悪くない。下手なCGでクリーチャーとしてみせるのではなく、現物を使ってみせてくれてるので、その肉体性を信じられるし、画面がそれなりの実在感を纏う。
往年の名女優たちが雪山で頑張ってる。それだけでも価値がある。特に倍賞美津子がかっちょいい。眼帯姿がロックンロールでした!ボンバイエ!
でも捨てられた女たちが、やたらフルネームで呼び合うのはなんか不自然。そもそも、彼女たちにとって、苗字は嫁いだ先の夫のものを貰ったわけですから、既存の日本的ムラ社会の名残ともいえる呼び方は嫌っていそうですけども。彼女らが、個人としてデンデラに属している意味や理由が薄れてしまうように思える。キャラクターの心理を掘り下げるからこそ、この作品のテーマとするものが意味を持つのでは?
雪山の夜、巨大なセットが炎上するクライマックス!まだ息はあるが助かる見込みがないほど負傷した仲間を囮に熊をおびき寄せて、蔵ごと焼き払うシーンは壮観。木造の建築物が炎上していると邦画の大作をみている!そんな気分になる。
ただ、この後もチンタラ続くのが良くない。壮絶なスペクタクルのエモーションの高まりを維持したまま見終えたいのに、後にくっ付いてる嫌にウェットなドラマパートは蛇足。
ババア連中のその後なんて描かずに、熊を倒してアクションとして終わっとくべきですよ。それだとB級パニック映画かもしれないけど、シミっ垂れた社会派風よりも、そっちのほうが面白いです。