イッソン

東京物語のイッソンのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.6
熱海旅行がいけなかったですね。
あの麻雀を徹夜でやるどこかの団体さん、あれが、よその旅館でやってくれていたら、笠智衆と東山千栄子もゆっくりできたのに。あの熱海で親不孝感と子どもなんてしょせん他人感が極まった。脚本はあそこでゆっくり伏線置いてます。

杉村春子が薄情な感じを濃く出していて、その夫役の中村伸郎が茶菓子かなんかのことを気にしているだけの男に見える。目立たないけれど何かちょっと嫌な感じを確実に残す。あの平べったい声がいいです。

原節子が聖母のように輝くから、杉村春子&伸郎コンビが現実的でつまらない人に見えて他人って感じが深まる。それは長男夫婦も同じ。

お婆さん役の東山千栄子が、ゾウさんみたいに優しい感じで良い。林明子の絵本「こんとあき」のお婆さんのモデルになっていると思う。

笠智衆はいつも同じセリフだ。しかもあたりまえのようなことしか言わない。それは小津監督の演出だからよしとして、笠智衆は当時まだ49歳?それでお爺さん役ってね、小津監督、無茶です。笠さんよく耐えました。

そして弟役の大阪志郎の「そうか、間に合わんかったか」が同じ体験のある自分にはジワ〜ンときて、ずっと記憶に残る。あのセリフの言い方が儚さが出ているように聞こえてしまう。

そして、え?この綺麗な娘さんは誰?と思ったのは香川京子。とても初々しくまぶしい。

家族なんて結局他人でみんな孤独だ。それでも、すべての時間が愛おしい。熱海旅行さえ上手くいってればね。