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東京物語のQIのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
【殿堂入り作品シリーズ】

“わたくしずるいんです…”

小津安二郎生誕120年の今年、キリ番かつ今年最後のレビューはこの作品で

自称小津ファンにも関わらず彼の作品は初レビュー😅

元ネタはレオ・マッケリー監督の『明日は来たらず』

あまりにも有名な本作について多くを語る必要はないと思いますが、家族、老い、死といった、人間にとって普遍的なテーマを何気ない日常の中で、小津調と言われてる様式で描いた、小津入門には最適な作品だと思います

尾道で暮らす老夫婦は子どもたちの住む東京に出かけるのですが…

自分達の生活を優先し両親の相手をまともにすることができない子どもたち

二人をささやかにもてなす戦死した息子嫁の紀子

東京から戻ったあと急逝した母親の葬儀が終わるやいなやそそくさと東京に戻る子どもたち

一人残された義父のそばに最後まで寄り添う紀子

そんな紀子を演じた原節子の魅力が小津作品にのめり込むようになったきっかけw

そして彼女の魅力を堪能できるのが…

紀子3部作

『晩春』
結婚に臆病になる紀子

『麦秋』
お見合いを断り、相手を自分で選ぶ紀子

そして本作『東京物語』

戦死した夫への思い、義理の両親への振る舞いにに葛藤する紀子

義父から「あんたはいい人だ、母さんもそう言っとった」という言葉に対して発する「とんでもない!」というシーンの衝撃

戦死した夫を忘れてしまうのではないか?
自分は偽善者なのではないか?

東京へ帰る帰路、義母の形見として義父から受け取った時計を眺めながら見せる複雑な表情からは彼女がそんなことを感じていることが痛いほど伝わります

ただそこには間違いなく、自分が愛した人を産み育ててくれた義理の両親への愛情があったはず

たとえ血はつながっていなくても、愛はそんなふうに受け継がれていくことの素晴らしさ

と同時に人は最後は一人になってゆくという残酷さ

小津監督は何気ない日常を描きながら、そんなことを私達に伝えてくれます

今も彼が世界中の人に愛され、彼のフォロワーが彼へのリスペクトを込めた作品を作り続けているのはそんな人間の本質を描き続けてきたからではないかと…

小津安二郎

世界に誇る映画監督が日本映画界から生まれたことに感謝!

そして彼が原節子という素晴らしい女優をフィルムに焼き付けてくれたこともw

ご挨拶

今年もたくさんのイイネやコメント、ありがとうございました🙇

来年も皆さんにとって良い年になることを、そして素晴らしい映画と出会えることを祈念して

それでは良いお年を!
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