小津安二郎監督作品初観賞。
今敏監督作『千年女優』のモデルにもなった原節子が「紀子」という役を演じていることから『晩春』『麦秋』と合わせて「紀子三部作」と呼ばれることがある。
小津安二郎監督作品としてもだが、恥ずかしながら白黒映画を観るのも今回が初めて。
きっかけは『家族はつらいよ』の一作目劇中に、意味ありげに登場するからであった。また山田洋次監督作品は、同じキャストで構成される『東京家族』(未観賞だが)も含め家族をテーマにしている映画が多い気がする。そして今作が、劇中に登場した答えを求め観賞に至ったのである。
今回は同じ「家族」というテーマを扱ったこの二作品を、比較しながらレビューしていきたい。
『家族はつらいよ』は、妻に離婚届を渡されてから物語が始まる。長年付き合ってきたはずの妻だったが、突然突きつけられる不満に焦る夫、慌てふためく家族。橋爪功の演技もあり、笑いの絶えない映画だったが、最後は忘れがちな家族への愛を思い出させてくれる映画だった。
一方今作はと言うと戦後の日本(1953年)が舞台であり、時代も作風も異なっている。黒電話や風景もだが、何より妻の危篤状態を知らされる電報が、残酷に時代を表現していた。
また主人公となる大家族は『東京物語』では、戦後に家族が生きていることを「幸せだ」と言われ、羨ましがられる描写がある。しかし外から見た関係ほど上手くいってはおらず、息子たちに会いに広島から東京に出向いて見ても肩身の狭い思いをするだけであった。
非常に切ない話だが、更に核家族化が進み、離婚していないことや、三世代が同居している生活自体を珍しがられる世界が『家族はつらいよ』で描く現代なのである。
